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2008.08.17 Sun 01:29:28
南の果てのお話し
南向きの窓
南の風
南国
南とつくとなんだかしあわせな響き
[南の果てにはしあわせがあるんだ]と彼が言うので、わたしは彼としあわせを探して南を目指しました。
最初にたどり着いたのは晴れた公園、古びたベンチに三毛猫。ぽかぽかしてます。
[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼が言うのでさらに南を目指しました。
道がぱっと開けて、小さな校庭にいろとりどりの歌声。きらきらしてます。
だけど彼は首を振ります。[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]。さらに南を目指しました。
ぐるぐる路地がいりくんで、おいしいごはんの香り。わたしはちょっとお腹が空きました。一軒のお家で温かいシチューをいただきました。わたしたちはとってもまんぷく。ちょっとしあわせ。彼はいつのまにかふくふく寝てしまいました。
次の朝、お腹がすいて目が覚めました。まんぷくは一晩でおしまい。
[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼が言います。わたしたちはさらに南を目指しました。
少し風が強くなって、白い砂と透き通るブルー、海でした。満ち潮がひたひた足元を潤します。
[ぼく魚を見たい。大きな魚がしあわせかも]と彼が言うので船を出していよいよ南を目指しました。
ちゃぷちゃぷ進むと海面にトビウオ、踊る虹のようなプリズムを描いています。それは音楽のよう。
だけどトビウオは小さいので[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼が言います。さらに南を目指しました。
海の真ん中に噴水、昼寝をするしろいくじら。くじらは黙ってぷかぷか。
くじらはおっきくて、噴水なんか持っててすてき。
ぐんぐん近づいてみました。くじらはすべすべして浮かんでいます。おっきくて魚の形をしていて噴水を持っていて、そのうえしろくて、くじらは完璧なしあわせでした。
[ぼくのしあわせ、これに決めた]と彼が言いました。
すべすべつるつるのしろいくじら、彼のしあわせ。
彼はくじらに触れました。
その瞬間
しろいくじらはびっくりして目を覚ましました。
しろいくじらは東京ドームくらいおっきいのです。飛び上がっただけで嵐がおきてしまいました。
わたしたちはあっというまに渦に飲まれてしまいました。しんでしまうのでしょうか。わたしはこわくなって彼の手を必死で握りました。彼は[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と言いました。ごもっともです。ぶくぶくぶく。
気がつくとシロクマとペンギン、スケートしてます。南極に来てしまったようです。
南に来てるはずなのにとても寒いのです。彼はくしゃみをしました。[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼が言ました。わたしたちは寒さに震えながら船で南を目指しました。
ずいぶん南に進みました。水平線しかない穏やかな波が続いています。どのくらい同じ景色を見ているのでしょうか。船はゆらゆらちゃぷちゃぷ進みます。わたしたちは疲れています。
[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼は言いました。わたしたちは仕方なく南を目指しています。
船がゴツンと言いました。
気がつくと港についていて、誰もいない感じ。カモメが空にハートを描いています。わたしは久しぶりの陸地にホッとしました。
[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼は言います。わたしたちは道を探して南を目指しました。
海辺が終わって
森
を抜けたら
街
になって
ぐんぐん進みます。
わたしたちはなんだか見たことのある公園にたどり着きました。古びたベンチに目を細めた三毛猫。
いつもと同じ今日に帰って来てしまったのでしょうか。それとも南の果てに、たどり着いたのでしょうか。
[ぼくが欲しいしあわせはこんなんじゃないよ]と彼が言いました。
はじまりと同じ場所で同じこと言った彼は、焼けていてすこしたくましくなっていました。
それで
わたしは言いました。
[じゃ南の果てへ行こう]
何周でも。
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