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わらうられつ
あしのり
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遅い時間のメトロはみんな石みたいないろの服着て石みたいにうごかない
目の前のハンプティダンプティなリーマンが自分のからだを支えきれなくて
揺れながら携帯をいじる様を眺めながら その手元の新聞を盗み見てた
背後でしつこい咳払いが続く 知り合いでもいるのかと思ってふりむいたら
こっくりうたた寝する熟年OLが自分の方へ寄っかかってくるのを
牽制するためのリーマンの咳払いだった みんな不機嫌そうだなあ



いつもの駅でわたしを降ろして去って行く電車が
地下の空気をかきわけてひっぱってゆくので
いつも改札のところでつよい風が起きる

前を歩くひとから何かがいきもののように風で飛ばされた
その動きが早すぎて影しか見えなかった 彼女は気づかないで去ってゆく
なんだったのだろうと思って振り向いたら ピンクの手袋だった
わたしは片方ひろった もう一方は生き物のように素早く改札を再入場して
わたしは改札に阻まれて どうしたらいいかわかんなくなって呆然
白紙のまま突っ立ってたら 背の高いメガネのおとこの人がわたしに気づいて
生き物のように走る手袋をキャッチして拾ってくれた
わたしはホッとして彼にお礼を言った

次の瞬間に持ち主を追いかけることを思いだして地上へ駆け上がった
みんな黒い服着てて 誰が誰だかわかんない
それでも彼女かなあと思うひとを少し先で見つけたから
走って追いかけた



声をかけたら それは電車でこっくりうたた寝をしてた熟年OLだった
手袋のピンクは捨ててもいいくらい毎日にくすんでくたびれてたけど
彼女は愛しいものに再会したような笑みで手袋を受けとってお礼を言った
その声はさっきのうたた寝の疲れた姿を感じさせない新しい声で
彼女は生きてると思った それでなんかホッとした
ピンクの手袋はそんな彼女の日々を温めて守る大切なツールなのだと思った
手袋が彼女の日々に帰れてよかったと思った



わたしの役目が終わって安心して帰路の歩道橋を歩きながら
わたしはあのメガネにお礼をきちんと言えなかったと思った

彼女から手袋が落ちたとき その影にだれも気づかなかった
わたしから手袋が逃げてゆくとき その姿にだれも気づかなかった
わたしとメガネだけが手袋が走る様に気づくことができた
わたしとメガネは同じものを見れたのだと思った

同じ場所で同じ時に同じくらいの風を受けても景色が様々に違う
そのなかで同じ視界を歩けるひとがどのくらいいるのだろうか
メガネの歩いてる世界は わたしに近いところだと思った


これからわたしが世界を歩くとき
どんなひとがわたしの近くを歩くだろうか
もし出逢えたら次は言葉を交わしてみたい


   



 
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